
売却責任
せっかく売れたのに
Aさんは無事、家の売却を終えました。
売却成立から1か月後、一本の電話が。
話を聞くと売却した家で雨漏りが・・・
住んでいたときは雨漏りなんてしなかったのにどうして?
どうやら買主側のリフォーム工事で壁紙をはがした所、下地ににじんだ箇所があり、
調査の結果、屋根の雨漏りから伝ってきているとのこと。
Aさんは修繕費として50万円を支払うことになりました。
瑕疵(かし)担保責任という言葉はご存じでしょうか。
売買不動産に隠れた瑕疵(=外部から容易に発見できない欠陥)がある場合、
売主がその責任を負うことを瑕疵担保責任といいます。隠れた瑕疵があった場合、
買主は売主に対して契約解除や損害賠償請求を主張することができます。
瑕疵担保責任とは、売主様の売却責任のことを言います。
実は2020年4月の改正民法により、瑕疵担保責任は契約不適合責任に置き換わりました。
結論からいうと瑕疵担保責任よりも契約不適合責任のほうが売主の売却責任は重くなりました。
これは、買主の主張できることが、契約解除や損害賠償請求の二つから、
修理・代替物の請求と代金減額請求の二つが増えて、合計四種の主張ができるようになりました。
Aさんで例えると、Aさんが売却したのが民法改正前の瑕疵担保責任時代のとき、
買主が壁裏の隠れた瑕疵(雨漏れ)が見つけたことで修繕費を主張しています。
仮に、あからさまに雨漏りしている状態であればどうでしょうか。
Aさんは特に買主に知らせることもなく、買主も見ればわかる雨漏りに納得して購入したとします。
また、契約書のどこにも雨漏れしている事実は書いてないとします。
買主が購入後に雨漏りを指摘して、損害賠償を主張したとしても、
Aさんは瑕疵担保責任は負いません。瑕疵担保責任は隠れた瑕疵に限定されるからです。
では、民法改正後の契約不適合責任ではどう考えるのでしょうか。
結論は雨漏れの記載が契約書に書いてあるかどうかになります。
Aさんが雨漏れを知っている知らないにかかわらず、
また買主が雨漏れを知っている知らないにかかわらずです。
つまり、契約書に雨漏れしている記載がなければ、買主が買った後に、
「雨漏りしていることは契約書に書いていない。損害賠償を主張します」と言われてしまい、Aさんは支払うことになります。
注目すべきは、買主があからさまな雨漏りを知っていたとしても、
契約書に書いていなければ後から契約不適合を主張できてしまいます。
契約不適合責任を負わない契約はできないかと考えると思います。
その契約はできます。ただし、売主が事実を知りながら告知しない場合は、
契約不適合責任を負わないとする契約内容は無効となります。
今後の売買契約では、細かいところまで契約書に明記することが大切です。
また住宅の付帯設備については「付帯設備の故障や不具合について、
修補・損害賠償その他一切の責任を負わないものとする」といった内容を明記する必要があります。
明記せずに、買主が「ここが違う」「書いてない」と主張を始めたら売主は責任を負う必要があります。
問題を回避するためには十分な告知を書面に残すことが大事です。
また、ホームインスペクションという住宅診断を入れた上で、
診断結果を洗いざらい買主に説明し、書類に残すことが大切です。
ホームインスペクションは5万円~10万円位かかります。
免許を持った専門家が建物内外を点検し、調査報告書にまとめ契約書面に残ります。
実は、ホームインスペクションの結果もすべて明記し、
考えられる対策をすべて行ったとしても、売主の売却責任は100%カバーできないのが実情です。
ホームインスペクションは非破壊検査といって、目視での点検が主になります。
つまり、Aさんの事例のような、壁紙まで表面化していない雨漏れは発見できない可能性があります。
屋根裏の目視点検で発見できる可能性もありますが、屋根以外のか所から雨漏れが壁を伝っている場合などは発見は困難でしょう。
しかしながら、今考えられる対策としては一番の選択肢であるといえます。
新築後数年しか経過していない一戸建や土地の場合は、契約不適合責任のリスクは少なくなるかもしれません。
それでも、リスクがゼロになることはありません。
相続したお家や、しばらく住んでいない家をご売却するときは特に注意して進めていきましょう。
築年数が相当経過した一戸建であれば土地として売却することも検討してみましょう。
売主様の契約不適合責任を減らすことは、買主様にとってもメリットがあります。
買主様は状態や程度の分からない不動産が一番の不安要素です。
ホームインスペクションや住んでいたときの不具合を書き出すことで、
安心してもらえるようになり。円滑な取引につながります。
不動産はこの世に一つしかない性質があります。
当社は不動産の価値を見極めてご売却方法についてご提案いたします。